司法書士の岡川です。
「相続は、死亡によって開始する」
五・七・五で、端的に相続の本質を言い表した見事な川柳です。
嘘です(民法882条の条文です。参照→「法律一発ネタその2」)。
我々のように法律を仕事にしている人間にとっては当たり前すぎることなので、あえて気にすることもないのですが、法律を専門としていない方にとっては、必ずしも「当たり前」ではないようで、たまに誤解されている方がいます。
相続というのは、亡くなった方の権利義務を包括的に(まるっとそっくりそのまま)受け継ぐ制度ですので、例外的な場合(生きてるのに死んだとみなされるような場合)を除けば、必ず人が死んで初めて相続が発生します。
家制度が採用されていた戦前の民法では、「隠居」という制度がありました。
その時代は、戸主が隠居すれば家督相続が開始するので、生前であっても次の戸主に地位が承継されることがあったのです。
現行民法では隠居制度はなくなりましたので、人が生きている間にその人の財産を誰かが相続することなどはできません。
「自分が生きている間に子に全財産を譲りたい」とか、「親が生きている間に親の不動産の名義を自分に書き換えたい」という場合、それは相続とは別の形式になります。
典型的には「贈与」という形が考えられます。
贈与は「契約」ですので、贈与者と受贈者との間の合意で財産が移転します。
生きている間に、死んだ後の財産の承継相手を指定しておきたい、というのであれば、遺言とか死因贈与(生きている間に贈与契約をして、死亡した時にその効力が発生するという内容の贈与)といった方法をとることになります。
相続と贈与では、手続的にも税金的にも色々と違いが出てきますので、まずは専門家に相談しましょう。
では、今日はこの辺で。
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