司法書士の岡川です。
東京オリンピック、もうグダグダですね。
新国立競技場に続き、エンブレムまで白紙になりました。
問題のパクリ疑惑ですが、実際にベルギーの劇場のロゴを参考にしたかどうかは本人にしかわからないところですが、仮に「参考にはしていない」といわれても、それはそれで「あり得る」と私は考えています。
というのも、ベルギーのロゴ自体、3つの要素の組み合わせというシンプルなデザインで、アルファベットの「T」と「日の丸」(これは右上の赤いやつではなく、64年のロゴのオマージュとして裏の空白部分に表現された大きな円)を組み合わせれば「ああなってしまう」というのは、(必然ではないですが)辿り着いてもおかしくない選択肢の一つと考えられるからです。
「右下の三角形は、『L』の切れ端じゃなければ何なのか?」という意見もありますけど、円を表現しようとしたらあそこに何か(余計なものが)必要なわけです。
迷走の果てに、何かが残ったのでしょう。
なので、ベルギーの劇場のロゴのように、かなりシンプルなデザインと「結果的に似てしまう」ことは十分ありうると思いますし、右上の赤い日の丸の存在もありますから、「似てるとしても別モノ」という主張もアリだと思うわけです。
結局のところ、シンプルなデザインで何かを表現しようとする人たちの宿命なのかな・・・と。
その後、審査段階での修正過程が出てきて、右下のアレも「円の一部」だということがよりハッキリしました。
なので、やっぱり「パクリでなくても、有り得る」デザインだといえます。
(もっとも、修正段階の案は、『T』の要素がどこにあるのかサッパリわからないですが…)
個人的には、右下のアレは、「迷走の果てに残された何か」なのだろうと思いますし、デザインの専門家からすれば、そこに芸術的な何かを見出すのかもしれませんが、いずれにしてもベルギーの『L』と無関係に存在しうる。
まあ、もちろん、本当にパクリだったかもしれないですけどね。
で、これだけならまだいいんですけど、原案デザインも一緒に出ました。
今話題の、「ヤン・チヒョルト展」のポスターにクリソツだというあれですね。
これ、「似ている」ってのはもちろんですが、そもそもの問題として、ここから最終デザインまでの継続性がなさすぎませんかね?
赤い円以外の全てが直線で構成されており、裏に隠された「大きな日の丸」というオマージュ要素がどこにもない。
こうなると、それこそ原案と最終案は「コンセプトが違うから別物」ということになるんじゃないでしょうか。
そして、原案自体も「ヤン・チヒョルト展」のポスターにそっくりですし、また、(あまり指摘されてないように思うのですが)パラリンピックのほうのエンブレムが「ヤン・チヒョルト展」のポスターの「J」と、パーツが同じです。
それに加えて、過去の作品の数々のパクリ疑惑と、決定打となった展開例の写真の明らかな無断流用。
仮に、真実としてエンブレム自体が「パクリではない」としても(その可能性はありうると思う)、もう、ここまで数々の疑惑が出てしまうと、理解を得るのは難しい。
実際に盗作なのかは、究極的には本人しかわかりません。
本人しかわからないことで第三者が結論を出すわけですから、信用できるかできないか、納得できるかできないかの問題になります。
他人の作品の流用が常態化していた中で、「今回は自分のオリジナルです」と言っても誰も信じないし、納得しない。
あらゆる反論がもう社会的には通用しないでしょうね。
これが刑事訴訟であれば、「疑わしきは被告人の利益に」の原則により話は違ってくるかもしれませんが。
というわけで、色々ごちゃごちゃ感想を書きましたが、あれはエンブレムには相応しくないという判断は妥当だと思います。
「パクリじゃないなら取り下げる必要がないはずだ」という意見もありますが、「真実は何か」を探り当てて解決する問題でもないとこまできましたので、仕方ないでしょう。
もちろん、「これが著作権侵害がどうか」というような法的な問題は別ですよ。
新しいエンブレムは、少なくとも「シンプルなデザイン」はやめた方がいいですね。
たぶん、どこかに似たようなデザインはあるはずだから・・・。
では、今日はこの辺で。
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