2015年9月5日土曜日

通貨偽造はとっても重罪

司法書士の岡川です。

千葉県の女子高生が、2千円札をコピーしてコンビニで使用したということで、偽造通貨行使の疑いで逮捕されたというニュースがありました。
この種の犯罪報道は、ちょくちょく出てきますね。

犯行態様が雑すぎますし、無知で軽率な高校生が軽い気持ちで行ったことだとは思うのですが、通貨偽造(偽造通貨行使も同罪)ってのは非常に重い犯罪です。


行使の目的で通貨を偽造した場合、通貨偽造罪が成立します。
この法定刑は「無期または3年以上の懲役」です。

これがどのくらいの罪かといいますと、「強制わいせつ致死傷」と同じです。
他には、「身代金目的略取(誘拐)」とも同じです。

さらに比較すると、無期懲役のない「傷害致死」や「強姦」よりも重い。


高校生がちょっと小銭が欲しいからって、軽い気持ちでその辺の子供を拉致して親に身代金要求したりしないでしょうけど、それをしたのと同じレベルの重大犯罪なのです。

3年以上の懲役が法定刑であるということは、その罪質が下限ギリギリ(懲役3年)に評価されない限りは執行猶予も付かないということになります。


なぜお札をコピーして使うのがそんなに重大犯罪なのか。

そもそも、お金(通貨)の価値というのは、専ら公衆の信用に基づいています。

通貨自体は、単なる紙切れです。
全面に絵柄が描かれてあるのでメモ用紙にも使えないし、その紙自体には、大した価値もないものです。

それなのに、2000円札が2000円の価値を有するのは、皆が「2000円札は2000円の価値があるもの」という信用があるからです。
2000円札が珍しいから2万円で買いたいという人はいるかもしれませんが、それは勝手にその人がその紙切れに2000円以上の価値を見出しているからであって、少なくとも、市場に出回れば2000円ポッキリの価値の物として扱われます。

確実に、額面通りの価値のものとして通用する、という信用に基づいて、通貨は取引手段として交換されており、これによって貨幣経済(もっといえば国家)が成り立っているのです。

ここに偽造通貨が紛れこむと、2000円札が必ずしも2000円の価値を持つとは限らなくなります。
2000円札は必ず2000円の価値を有する、という信用が失われてしまうと、取引手段として利用できなくなり、貨幣経済にとっては大問題です。


そういうわけなので、通貨偽造というのは、単に店に対して損害を与える犯罪ではなく、公衆に対する、社会的法益を侵害する犯罪として分類されるのです。
「偽札つかまされたコンビニに損害を与えた」程度の問題ではなく、国家レベルの問題になるわけですね。

なので、軽い気持ちでやって簡単に許されるような犯罪ではないのです。
時代が時代なら、斬首にされるレベルの凶悪犯罪です(本当です)。

良識ある皆さんは、通貨の偽造は、絶対にやめましょう。


では、今日はこの辺で。

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