司法書士の岡川です。
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、生活様式や業務形態に多大な変化が起きています。
感染拡大の第一波はひとまず落ち着いた(終息したとはいえないが)ようにもみえるところ、公的な金銭的支援も本格的に開始しています。
特に、事業者向けの支援制度は、かなり多種多様なものがあります。
国からの支援については、経済産業省のホームぺージにまとまっているので、そちらをご参考ください。
さて、事業者向けの支援は、各自治体独自のものもあります。
その中で、大阪府は、大阪府休業要請外支援金という制度を作っています。
これは、休業要請支援金(府・市町村共同支援金)の対象とならなかった(要するに休業要請の対象外の)事業者に対する支援です。
休業要請支援金に比べると額は少なくなりますが、大阪府内に事業所を有する中小企業や個人事業主が対象となっており、休業要請の対象にならなかった事業者についても負担となっている家賃等の固定費を支援する目的のものです。
詳しい要件等は大阪府のホームページで確認していただきたいのですが、個人事業主については、専門家による申請書類の事前確認の制度があります。
これは、申請書を提出する前に専門家(行政書士等)に確認を受けることで、(大量の事務処理に追われる役所の負担を軽減して)申請手続を円滑に進めるために設けられたものです。
事前確認は必須ではありませんが、事前確認が行われなかった申請は、支給までに時間がかかるようです。
(なお、基本的には書類が揃っているかのチェックであって、申請書類の作成支援や、書類の内容をみて審査をするわけではありません。)
この事前確認は、休業要請外支援金の申請しようとする個人事業主が無料で専門家に依頼することができます。
当事務所においても、行政書士事務所として無料で事前確認を行っています。
→大阪府休業要請外支援金について
当事務所は高槻市(高槻市役所の近く)にありますので、特に高槻市にお住まい(あるいは事業所を構えている)の個人事業主の皆さんで、事前確認をご希望の方は、事務所ホームページの問い合わせページからお問合せください(もちろん、市外の個人事業主の方でも構いません)。
→お問い合わせはこちら
なお、電話をいただくより、問い合わせフォームからメールでご連絡いただいたほうが、スムーズに予約がとれます。
では、今日はこの辺で。
2020年5月11日月曜日
三権分立と国民との関係
司法書士の岡川です。
ここ数日で、やたらと三権分立の話題を目にします。
きっかけは検察庁法改正に絡んだもので、この改正が三権分立に反するとか反しないとかいう話からのようです。
そこから派生したのか、何やら「首相官邸のホームページに掲載されている三権分立の図が間違っている(意図的に改竄されている)」といった指摘が出てきているようです。
(首相官邸HP「内閣制度の概要」より)
どこがおかしいかというと、「内閣」と「国民」との間の矢印が逆だと。
一般的には(教科書などでは)、国民から内閣に対して「世論」という矢印が出ている以下のような図が使われているからですね。
(衆議院HP「三権分立」より)
首相官邸HPの図を見て、「三権分立を理解していない」とか「行政による国民の監視(独裁・主権者国民の上に君臨)を意味している」とか「安倍政権の独裁の意識が云々…」といった批判の声が出ているようです。
しかし実は、「教科書に載っているのと違う」といっても、必ずしも首相官邸HPの図が三権分立の説明として間違いであるとはいえません。
また、首相官邸HPの図も、国民の上に行政が君臨することを意味しているとも読み取ることはできません。
順を追って解説しましょう。
そもそも、三権分立とは、国家権力を「立法」「行政」「司法」の3種類(三権)に分類し、それぞれの権力を担う国家機関を分けることで権力の集中を防ぎ、国民の自由と権利を保護するという考え方です。
三権分立というシステムは、ただ単に機関を分けるだけでは機能しませんので、三権が相互に抑制と均衡(チェックアンドバランス)を保つ仕組が必要となります。
そこで、日本国憲法において、上記のいずれの図にも三権の間に双方向に矢印が引かれているとおりの制度が用意されています。
この抑制と均衡(チェックアンドバランス)の仕組こそが、「三権分立」の本質的部分です。
この点において、首相官邸HPの図も、少なくとも「三権分立」に関して全く間違ったことは書かれていません。
正しく、「三権」が「分立」されて、その間の抑制と均衡の仕組が説明されていますからね。
三権分立の問題でなければ、何の問題なのか。
つまり、この三権と国民との関係、図でいうと、三権と真ん中の「国民」との間の矢印は何なのかです。
ここに首相官邸HPの図と一般的に用いられている図とで違いがあるわけですが、「三権」の「分立」の話ではありません。
ここは、三権と主権者国民との関係ですから、民主主義(民主制)に関する仕組、言い換えれば、国家権力の民主的統制(コントロール)に関する仕組を説明している部分です。
例えば、立法機関(国会)に対しては国会議員の選挙という形で、司法(裁判所)に対しては、極めて限定的ではありますが、国民審査という形で、それぞれ民主的統制を及ぼしています。
これに対応する形の、行政機関(内閣)と国民との間の、民主主義に関する仕組とは何か。
例えばアメリカでは、行政のトップである大統領は選挙で選ばれるので、ここには「選挙」という語が入ることになるでしょう。
しかし、そのような、行政機関に対して国民が直接的に民主的統制を及ぼす仕組は、日本国憲法においては用意されていません。
社会の教科書では、三権分立と同時に「議院内閣制」という言葉も習ったと思います。
日本の議院内閣制は、アメリカの大統領制とは異なり、立法機関である国会が、国会議員の中から、行政のトップである内閣総理大臣を選びます。
また、国会(衆議院)で内閣不信任決議をされると、内閣は総辞職をしなければなりません。
そして、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」(日本国憲法66条3項)のです。
つまり、日本国憲法が想定する議院内閣制の下では、行政に対する民主的統制は、国会を通じた間接的なコントロールということになります。
ということは実は、図でいうと、国民と行政との間には「矢印が無い」というのが一番正確だということもできます。
一般的に使われている図では、ここに「世論」という矢印が描かれており、首相官邸の図ではその「世論」が消されていることも一つの批判になっていますが、図内の「世論」以外の矢印は全て、「三権分立」や「民主主義」に実効性をもたすために日本国憲法が用意した諸制度です。
これに対し、「世論」自体は、行政を統制するシステムではありません。
確かに世論自体は重要な要素ではありますが、それをここに図示するのであれば、「世論を行政に反映させる具体的な仕組み」でなければならない(そして、その仕組は日本国憲法では存在しない)わけです。
ここに「世論」という矢印を描いてしまうのは、国民と国会との間の矢印(「選挙」とある部分)に「民意」とか書くようなもので、完全に異質なものです。
そのため、この「世論」というのは、ものによっては、括弧書きにされていたり、矢印が点線とか薄い色とかに変えられていることもあるようです。
ところで、首相官邸HPの図では、内閣から国民に対して「行政」という矢印が引かれています。
ここで「矢印の向きが違う」と批判されているわけですが、「行政」という国家権力の作用をこの図に書き込むのであれば、それはこの向きで正しいわけです。
仮に、ここに「統制」とか「コントロール」とか書かれてたら流石にヤバいわけですが、そうではありません。
だからこの向きに関しては、これはこれでよいのです。
もっとも、上記の説明のとおり、ここに「行政」と書くのも異質といえば異質です。
何故ならここだけ三権分立とか民主主義の話とは違う内容の矢印になっているからです。
何でこんなこと書いたのか…。
ただよく見てください。
この図、そもそも「三権分立」とか「民主主義」の説明ではなく、「現行憲法下の内閣制度」の説明のページに記載されている図なんですよね。
つまり、このページは、「内閣→行政→国民」というこの部分(行政という国家作用を担っているのが内閣ですよ、という話)が中心的話題なわけです。
だから、この矢印は他の矢印と区別して、なんなら、むしろもっと目立つように強調した矢印で「行政」って書いておいても良かったくらいなのです。
中途半端に他の矢印と合わせて(それでいて矢印の方向だけ逆にした)もんだから、わけのわからない印象を与えたわけですね。
ちなみに、Internet Archiveで調べればすぐわかることなのですが、この図は少なくとも20年前から首相官邸で使われていた図です。
「いつの間にか改竄されていた」とか「安倍政権の意図が反映された」とかいうものではありません。
そういう批判は完全に的外れです。
まあ、そういうわけで、結論としては、首相官邸の図を見て、「安倍政権は三権分立を理解していない(破壊するつもりだ)」という批判をすることは、色んな意味で誤っているといえます。
実際に安倍政権が三権分立を理解・尊重しているかどうかは知りません。
その点に批判的意見があるのは構わないと思います。
ただ、少なくともそれは首相官邸HPの図とは全く関係のないことです。
では、今日はこの辺で。
ここ数日で、やたらと三権分立の話題を目にします。
きっかけは検察庁法改正に絡んだもので、この改正が三権分立に反するとか反しないとかいう話からのようです。
そこから派生したのか、何やら「首相官邸のホームページに掲載されている三権分立の図が間違っている(意図的に改竄されている)」といった指摘が出てきているようです。
(首相官邸HP「内閣制度の概要」より)
どこがおかしいかというと、「内閣」と「国民」との間の矢印が逆だと。
一般的には(教科書などでは)、国民から内閣に対して「世論」という矢印が出ている以下のような図が使われているからですね。
(衆議院HP「三権分立」より)
首相官邸HPの図を見て、「三権分立を理解していない」とか「行政による国民の監視(独裁・主権者国民の上に君臨)を意味している」とか「安倍政権の独裁の意識が云々…」といった批判の声が出ているようです。
しかし実は、「教科書に載っているのと違う」といっても、必ずしも首相官邸HPの図が三権分立の説明として間違いであるとはいえません。
また、首相官邸HPの図も、国民の上に行政が君臨することを意味しているとも読み取ることはできません。
順を追って解説しましょう。
そもそも、三権分立とは、国家権力を「立法」「行政」「司法」の3種類(三権)に分類し、それぞれの権力を担う国家機関を分けることで権力の集中を防ぎ、国民の自由と権利を保護するという考え方です。
三権分立というシステムは、ただ単に機関を分けるだけでは機能しませんので、三権が相互に抑制と均衡(チェックアンドバランス)を保つ仕組が必要となります。
そこで、日本国憲法において、上記のいずれの図にも三権の間に双方向に矢印が引かれているとおりの制度が用意されています。
この抑制と均衡(チェックアンドバランス)の仕組こそが、「三権分立」の本質的部分です。
この点において、首相官邸HPの図も、少なくとも「三権分立」に関して全く間違ったことは書かれていません。
正しく、「三権」が「分立」されて、その間の抑制と均衡の仕組が説明されていますからね。
三権分立の問題でなければ、何の問題なのか。
つまり、この三権と国民との関係、図でいうと、三権と真ん中の「国民」との間の矢印は何なのかです。
ここに首相官邸HPの図と一般的に用いられている図とで違いがあるわけですが、「三権」の「分立」の話ではありません。
ここは、三権と主権者国民との関係ですから、民主主義(民主制)に関する仕組、言い換えれば、国家権力の民主的統制(コントロール)に関する仕組を説明している部分です。
例えば、立法機関(国会)に対しては国会議員の選挙という形で、司法(裁判所)に対しては、極めて限定的ではありますが、国民審査という形で、それぞれ民主的統制を及ぼしています。
これに対応する形の、行政機関(内閣)と国民との間の、民主主義に関する仕組とは何か。
例えばアメリカでは、行政のトップである大統領は選挙で選ばれるので、ここには「選挙」という語が入ることになるでしょう。
しかし、そのような、行政機関に対して国民が直接的に民主的統制を及ぼす仕組は、日本国憲法においては用意されていません。
社会の教科書では、三権分立と同時に「議院内閣制」という言葉も習ったと思います。
日本の議院内閣制は、アメリカの大統領制とは異なり、立法機関である国会が、国会議員の中から、行政のトップである内閣総理大臣を選びます。
また、国会(衆議院)で内閣不信任決議をされると、内閣は総辞職をしなければなりません。
そして、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」(日本国憲法66条3項)のです。
つまり、日本国憲法が想定する議院内閣制の下では、行政に対する民主的統制は、国会を通じた間接的なコントロールということになります。
ということは実は、図でいうと、国民と行政との間には「矢印が無い」というのが一番正確だということもできます。
一般的に使われている図では、ここに「世論」という矢印が描かれており、首相官邸の図ではその「世論」が消されていることも一つの批判になっていますが、図内の「世論」以外の矢印は全て、「三権分立」や「民主主義」に実効性をもたすために日本国憲法が用意した諸制度です。
これに対し、「世論」自体は、行政を統制するシステムではありません。
確かに世論自体は重要な要素ではありますが、それをここに図示するのであれば、「世論を行政に反映させる具体的な仕組み」でなければならない(そして、その仕組は日本国憲法では存在しない)わけです。
ここに「世論」という矢印を描いてしまうのは、国民と国会との間の矢印(「選挙」とある部分)に「民意」とか書くようなもので、完全に異質なものです。
そのため、この「世論」というのは、ものによっては、括弧書きにされていたり、矢印が点線とか薄い色とかに変えられていることもあるようです。
ところで、首相官邸HPの図では、内閣から国民に対して「行政」という矢印が引かれています。
ここで「矢印の向きが違う」と批判されているわけですが、「行政」という国家権力の作用をこの図に書き込むのであれば、それはこの向きで正しいわけです。
仮に、ここに「統制」とか「コントロール」とか書かれてたら流石にヤバいわけですが、そうではありません。
だからこの向きに関しては、これはこれでよいのです。
もっとも、上記の説明のとおり、ここに「行政」と書くのも異質といえば異質です。
何故ならここだけ三権分立とか民主主義の話とは違う内容の矢印になっているからです。
何でこんなこと書いたのか…。
ただよく見てください。
この図、そもそも「三権分立」とか「民主主義」の説明ではなく、「現行憲法下の内閣制度」の説明のページに記載されている図なんですよね。
つまり、このページは、「内閣→行政→国民」というこの部分(行政という国家作用を担っているのが内閣ですよ、という話)が中心的話題なわけです。
だから、この矢印は他の矢印と区別して、なんなら、むしろもっと目立つように強調した矢印で「行政」って書いておいても良かったくらいなのです。
中途半端に他の矢印と合わせて(それでいて矢印の方向だけ逆にした)もんだから、わけのわからない印象を与えたわけですね。
ちなみに、Internet Archiveで調べればすぐわかることなのですが、この図は少なくとも20年前から首相官邸で使われていた図です。
「いつの間にか改竄されていた」とか「安倍政権の意図が反映された」とかいうものではありません。
そういう批判は完全に的外れです。
まあ、そういうわけで、結論としては、首相官邸の図を見て、「安倍政権は三権分立を理解していない(破壊するつもりだ)」という批判をすることは、色んな意味で誤っているといえます。
実際に安倍政権が三権分立を理解・尊重しているかどうかは知りません。
その点に批判的意見があるのは構わないと思います。
ただ、少なくともそれは首相官邸HPの図とは全く関係のないことです。
では、今日はこの辺で。
2020年4月17日金曜日
「期日」の意味
司法書士の岡川です。
新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。
東京や大阪等を対象として発令された緊急事態宣言が、全国に拡大されるようです。
緊急事態宣言の影響というか感染拡大の影響は司法の世界でも例外ではなく、緊急事態宣言の期間中、裁判所では原則として全ての期日が取り消されました。
保全事件のような、緊急性の高いものは引き続き行われる予定ですけどね。
ところで、我々のような裁判に携わる法律実務家(弁護士や司法書士)は、気軽に「期日」という言葉を使うんですが、法律家が「期日」と言ったとき、一般的な日本語とは少し意味が異なることが多い。
なので、一般の方を相手に期日とか言っても伝わらない可能性があるんですよね。
というわけで、改めて法律用語の「期日」とは何か。
ひとつめの意味は、まあ普通の日本語の意味とほぼ同じで、単純に「ある特定の日」のことです。
法律用語としてもう少し意味を限定すると、何らかの行為をすべき日であったり何らかの事実が生じる日です。
例えば、法律の施行期日といったら、法律が施行される日ですね。
これに対し、訴訟法上の期日、つまり裁判に関する話題の中で出てくる「期日」というのは、当事者が(主に裁判所に)集まって訴訟行為をする時間をいいます。
冒頭に書いた「期日が取り消された」という場合の期日は、この意味ですね。
具体的には、民事訴訟では口頭弁論記述や弁論準備期日等があり、刑事訴訟では公判期日等があります。
この期日は、特定の一日全部ではなく、実務上は「何年何月何日何時」まで特定されます。
そして、その時刻(実際には多少ずれるんですけど)に、裁判長による宣言(黙示的なものも含む)によって開始してから終了するまでの時間が期日です。
期日に手続が行われることを、俗に「期日が開かれる」とかとか言ったりします。
後者の意味で「期日」と言った場合、当然そこには「その時間に当事者が集まって訴訟行為をする」という意味が含まれています。
ということは、「次の期日は何月何日何時です」と言った場合、「その時間に裁判手続が行われます(≒法廷に行きます)」という意味になるわけですね。
で、冒頭にあるように「期日が取り消された」ということは、言い換えれば「予定されていた全ての裁判手続が行われなくなった(≒法廷が開かれなくなった)」というのとほぼ同義です。
まあ、厳密にいえば裁判手続は期日外でも行われるので、期日取消=手続全部ストップというわけではないのですが。
緊急事態宣言の対象が全国になれば、全国的に期日が一律に取り消されることになるでしょうから、つまり、全国で多くの裁判がストップすることになるわけです。
なかなか大変な状況になりましたが、緊急事態宣言が長引くと、司法機能がマヒしたままになってしまいます。
どうなることやら…。
では、今日はこの辺で。
新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。
東京や大阪等を対象として発令された緊急事態宣言が、全国に拡大されるようです。
緊急事態宣言の影響というか感染拡大の影響は司法の世界でも例外ではなく、緊急事態宣言の期間中、裁判所では原則として全ての期日が取り消されました。
保全事件のような、緊急性の高いものは引き続き行われる予定ですけどね。
ところで、我々のような裁判に携わる法律実務家(弁護士や司法書士)は、気軽に「期日」という言葉を使うんですが、法律家が「期日」と言ったとき、一般的な日本語とは少し意味が異なることが多い。
なので、一般の方を相手に期日とか言っても伝わらない可能性があるんですよね。
というわけで、改めて法律用語の「期日」とは何か。
ひとつめの意味は、まあ普通の日本語の意味とほぼ同じで、単純に「ある特定の日」のことです。
法律用語としてもう少し意味を限定すると、何らかの行為をすべき日であったり何らかの事実が生じる日です。
例えば、法律の施行期日といったら、法律が施行される日ですね。
これに対し、訴訟法上の期日、つまり裁判に関する話題の中で出てくる「期日」というのは、当事者が(主に裁判所に)集まって訴訟行為をする時間をいいます。
冒頭に書いた「期日が取り消された」という場合の期日は、この意味ですね。
具体的には、民事訴訟では口頭弁論記述や弁論準備期日等があり、刑事訴訟では公判期日等があります。
この期日は、特定の一日全部ではなく、実務上は「何年何月何日何時」まで特定されます。
そして、その時刻(実際には多少ずれるんですけど)に、裁判長による宣言(黙示的なものも含む)によって開始してから終了するまでの時間が期日です。
期日に手続が行われることを、俗に「期日が開かれる」とかとか言ったりします。
後者の意味で「期日」と言った場合、当然そこには「その時間に当事者が集まって訴訟行為をする」という意味が含まれています。
ということは、「次の期日は何月何日何時です」と言った場合、「その時間に裁判手続が行われます(≒法廷に行きます)」という意味になるわけですね。
で、冒頭にあるように「期日が取り消された」ということは、言い換えれば「予定されていた全ての裁判手続が行われなくなった(≒法廷が開かれなくなった)」というのとほぼ同義です。
まあ、厳密にいえば裁判手続は期日外でも行われるので、期日取消=手続全部ストップというわけではないのですが。
緊急事態宣言の対象が全国になれば、全国的に期日が一律に取り消されることになるでしょうから、つまり、全国で多くの裁判がストップすることになるわけです。
なかなか大変な状況になりましたが、緊急事態宣言が長引くと、司法機能がマヒしたままになってしまいます。
どうなることやら…。
では、今日はこの辺で。
2020年3月18日水曜日
債権法改正について(41)(贈与・請負・消費貸借・使用貸借・寄託)
司法書士の岡川です。
売買や賃貸借以外の契約類型でも色々と改正はあるんですけど、それほど長々と解説するほどのものでもないので、主だった改正点をまとめて一気に解説してしまいます。
まず、贈与については、担保責任の規定が変わります。
売買契約(有償契約)では従来の担保責任が契約不適合責任に置き換わったように、無償契約である贈与についても贈与者の担保責任に関する規定はなくなります。
その代わり、「贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する」という引渡義務(原則として特定した時の状態で引き渡す義務)の規定になります。
請負契約についても改正されます。
現行法の請負契約には、独自の瑕疵担保責任の条項があるのですが、改正によって民法全体を通じて担保責任のルールが契約不適合責任として整理されたので、請負契約も全部これに乗っかって、基本的には契約不適合責任の一般的なルールに従うことになります。
現行法では、建物の構造によって消滅時効の期間が分かれてたり、建物の建築請負は瑕疵があっても解除できない(解除されたら解体しないといけないので経済的損失が大きすぎるからという理由)というルールになってたりするのですが、そういう請負契約独自ルールがほぼ消えました。
スッキリですね。
ただし、「注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合」の場合に責任追及できないというのは、現行法が維持されています。
ところで、売買や贈与などのように、多くの契約は、当事者の意思の合致があれば目的物を引き渡さなくても契約自体は成立します(引き渡さなければ債務不履行の問題となる)。
意思の合致だけで成立する契約を諾成契約といいます。
これに対し、現行法における消費貸借・使用貸借契約・寄託契約については、契約の成立には当事者の意思の合致だけでなく、目的物の給付が必要とされており、目的物を借主に渡した時点で契約成立となります。
当事者の意思だけでなく、実際に物を渡さないと契約自体が成立しない契約を、要物契約といいます。
とはいえ、実際には、目的物の給付をせずに契約を成立させ、物の給付は後日ということもかなり一般的に行われており、これらも適法な契約とされています(契約自由の原則)。
民法上要物契約なんだけど、特約で要物性を排除した契約を、諾成的消費貸借契約とか諾成的使用貸借契約といいます。
これが認められるということは、わざわざこれらの契約だけ民法上の原則ルールを要物契約とする合理性もなく、むしろ逆に、必要に応じて目的物の給付を条件とすればよい。
てことで、改正法では、書面による消費貸借契約は諾成契約となり、使用貸借契約と寄託契約は全て(書面によらない契約であっても)諾成契約となります。
したがって、いずれの契約も、目的物を給付しなくても契約自体は成立することになります。
つまり、改正法で要物契約として残っているのは、書面によらない消費貸借契約のみになりました。
比較的大きな改正点としてはこれくらいですかね。
他にも色々ありますが、ほとんどが実務的に認められてきたことが明文化されたものです。
・・・と、いうわけで、2017年5月に始まって、何と2年10か月もの長い年月をかけて、遂に債権法改正シリーズが完結しました!
おめでとうございます!ありがとうございます!
あー疲れた。
債権法改正について書き始めたときは、まさかこんなに時間がかかるとは思わなかったよね。
どう考えても、更新頻度が遅すぎです。
こんなことしてる間に、相続法改正が改正され、しかも大部分が施行されるという一大イベントがあったのに完全スルーしてしまったという。
まあ、債権法改正シリーズも終わったことだし、相続法改正にもそのうち触れますかね。
では、今日はこの辺で。
売買や賃貸借以外の契約類型でも色々と改正はあるんですけど、それほど長々と解説するほどのものでもないので、主だった改正点をまとめて一気に解説してしまいます。
まず、贈与については、担保責任の規定が変わります。
売買契約(有償契約)では従来の担保責任が契約不適合責任に置き換わったように、無償契約である贈与についても贈与者の担保責任に関する規定はなくなります。
その代わり、「贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する」という引渡義務(原則として特定した時の状態で引き渡す義務)の規定になります。
請負契約についても改正されます。
現行法の請負契約には、独自の瑕疵担保責任の条項があるのですが、改正によって民法全体を通じて担保責任のルールが契約不適合責任として整理されたので、請負契約も全部これに乗っかって、基本的には契約不適合責任の一般的なルールに従うことになります。
現行法では、建物の構造によって消滅時効の期間が分かれてたり、建物の建築請負は瑕疵があっても解除できない(解除されたら解体しないといけないので経済的損失が大きすぎるからという理由)というルールになってたりするのですが、そういう請負契約独自ルールがほぼ消えました。
スッキリですね。
ただし、「注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合」の場合に責任追及できないというのは、現行法が維持されています。
ところで、売買や贈与などのように、多くの契約は、当事者の意思の合致があれば目的物を引き渡さなくても契約自体は成立します(引き渡さなければ債務不履行の問題となる)。
意思の合致だけで成立する契約を諾成契約といいます。
これに対し、現行法における消費貸借・使用貸借契約・寄託契約については、契約の成立には当事者の意思の合致だけでなく、目的物の給付が必要とされており、目的物を借主に渡した時点で契約成立となります。
当事者の意思だけでなく、実際に物を渡さないと契約自体が成立しない契約を、要物契約といいます。
とはいえ、実際には、目的物の給付をせずに契約を成立させ、物の給付は後日ということもかなり一般的に行われており、これらも適法な契約とされています(契約自由の原則)。
民法上要物契約なんだけど、特約で要物性を排除した契約を、諾成的消費貸借契約とか諾成的使用貸借契約といいます。
これが認められるということは、わざわざこれらの契約だけ民法上の原則ルールを要物契約とする合理性もなく、むしろ逆に、必要に応じて目的物の給付を条件とすればよい。
てことで、改正法では、書面による消費貸借契約は諾成契約となり、使用貸借契約と寄託契約は全て(書面によらない契約であっても)諾成契約となります。
したがって、いずれの契約も、目的物を給付しなくても契約自体は成立することになります。
つまり、改正法で要物契約として残っているのは、書面によらない消費貸借契約のみになりました。
比較的大きな改正点としてはこれくらいですかね。
他にも色々ありますが、ほとんどが実務的に認められてきたことが明文化されたものです。
・・・と、いうわけで、2017年5月に始まって、何と2年10か月もの長い年月をかけて、遂に債権法改正シリーズが完結しました!
おめでとうございます!ありがとうございます!
あー疲れた。
債権法改正について書き始めたときは、まさかこんなに時間がかかるとは思わなかったよね。
どう考えても、更新頻度が遅すぎです。
こんなことしてる間に、相続法改正が改正され、しかも大部分が施行されるという一大イベントがあったのに完全スルーしてしまったという。
まあ、債権法改正シリーズも終わったことだし、相続法改正にもそのうち触れますかね。
では、今日はこの辺で。
2020年3月6日金曜日
債権法改正について(40)(賃貸借)
司法書士の岡川です。
賃貸借契約も色々と重大な改正点があります。
といっても、賃貸借という契約類型は、これまでに大量の判例が確立していて(継続的な契約関係であることから、争いになり易いんでしょう)、今回それらが明文化されたという改正が多い。
そのため、条文の改正の多さの割には、実務上それほど大きな変化はないかもしれません。
まず、現行法では、賃貸借契約の存続期間は20年を超えることができません(20年を超える契約を締結しても20年となる)。
期間経過後に更新することはできますが、更新も20年を超えることができません。
これは、あまり長期間の賃貸借を認めると、所有者の権利制限が過酷になりすぎるという配慮だといわれています。
とはいえ、現代社会では20年を超える長期の事業のために賃貸借契約を締結する需要もあり、一律に20年で切るのは短すぎるという指摘がありました。
そこで、上限が一気に50年まで延びました。
とはいえ、借地借家法等の特別法の適用がある場面では、そもそも民法の上限は排除されていましたので、家を建てるための借地などには影響がありません。
賃貸住宅も、だいたい2年契約とかになっていて、更新しながら借り続けることが多い。
なので、影響は限定的ですね。
次に、「対抗要件を備えた賃貸借契約の目的物である不動産を譲渡した場合、賃貸人の地位は当然に譲受人に移転する」というのは、有名な判例で、実務上あたりまえに受け入れられているルールなのですが、これも明文化されました(改正605条の2)。
賃貸住宅の所有者が、その家を他人に売ったら、改めて新しい所有者(買主)と借主が契約し直さなくても自動的に新しい所有者が賃貸人の地位を引き継ぐ、という話です。
このとき、賃貸人の地位を留保する合意をし、かつ譲渡人と譲受人との間で賃貸借契約をする(要するに、旧所有者が新所有者から賃借する)合意をすれば、賃貸人の地位は移転しないというルールが新設されました。
つまり、旧所有者は新所有者から賃借し、賃借人は(従前のまま)旧所有者から賃借(転借?)するという関係になってもよいというわけです。
それから、対抗要件を備えた賃借人は、賃借権に基づき第三者に対して妨害排除や占有回復を請求できることが明記されました(605条の4)。
今までも、判例が色々と理屈をこねて結論的には何かしら請求可能だったのですけど、それが直截的に賃借権に基づく請求権として明文化されたものです。
細かいとこでは、賃貸物の一部が滅失した場合、現行法では賃料減額請求ができることになっていますが、改正法では、請求しなくても当然に減額されることになりました(改正611条1項)。
他にも、結構あたりまえのことが明文化されていますね。
賃貸人に修繕義務がありますが、賃借人に帰責性がある場合は修繕しなくてよいだとか(改正606条1項但書)、賃貸人が修繕してくれないときは賃借人が修繕できるだとか(607条の2)、目的物が全部滅失したら賃借権が消滅するだとか(616条の2)。
敷金の性質が明記されたり(622条の2)、原状回復義務に通常損耗は含まれないことが明記されたり(改正621条)とかは、まあ重要な改正ではあるのですけど、実際の場面として、特に大幅に何かが変わったわけではない(基本的には判例の明文化)ので、条文確認しといてね、といったところ。
では、今日はこの辺で。
賃貸借契約も色々と重大な改正点があります。
といっても、賃貸借という契約類型は、これまでに大量の判例が確立していて(継続的な契約関係であることから、争いになり易いんでしょう)、今回それらが明文化されたという改正が多い。
そのため、条文の改正の多さの割には、実務上それほど大きな変化はないかもしれません。
まず、現行法では、賃貸借契約の存続期間は20年を超えることができません(20年を超える契約を締結しても20年となる)。
期間経過後に更新することはできますが、更新も20年を超えることができません。
これは、あまり長期間の賃貸借を認めると、所有者の権利制限が過酷になりすぎるという配慮だといわれています。
とはいえ、現代社会では20年を超える長期の事業のために賃貸借契約を締結する需要もあり、一律に20年で切るのは短すぎるという指摘がありました。
そこで、上限が一気に50年まで延びました。
とはいえ、借地借家法等の特別法の適用がある場面では、そもそも民法の上限は排除されていましたので、家を建てるための借地などには影響がありません。
賃貸住宅も、だいたい2年契約とかになっていて、更新しながら借り続けることが多い。
なので、影響は限定的ですね。
次に、「対抗要件を備えた賃貸借契約の目的物である不動産を譲渡した場合、賃貸人の地位は当然に譲受人に移転する」というのは、有名な判例で、実務上あたりまえに受け入れられているルールなのですが、これも明文化されました(改正605条の2)。
賃貸住宅の所有者が、その家を他人に売ったら、改めて新しい所有者(買主)と借主が契約し直さなくても自動的に新しい所有者が賃貸人の地位を引き継ぐ、という話です。
このとき、賃貸人の地位を留保する合意をし、かつ譲渡人と譲受人との間で賃貸借契約をする(要するに、旧所有者が新所有者から賃借する)合意をすれば、賃貸人の地位は移転しないというルールが新設されました。
つまり、旧所有者は新所有者から賃借し、賃借人は(従前のまま)旧所有者から賃借(転借?)するという関係になってもよいというわけです。
それから、対抗要件を備えた賃借人は、賃借権に基づき第三者に対して妨害排除や占有回復を請求できることが明記されました(605条の4)。
今までも、判例が色々と理屈をこねて結論的には何かしら請求可能だったのですけど、それが直截的に賃借権に基づく請求権として明文化されたものです。
細かいとこでは、賃貸物の一部が滅失した場合、現行法では賃料減額請求ができることになっていますが、改正法では、請求しなくても当然に減額されることになりました(改正611条1項)。
他にも、結構あたりまえのことが明文化されていますね。
賃貸人に修繕義務がありますが、賃借人に帰責性がある場合は修繕しなくてよいだとか(改正606条1項但書)、賃貸人が修繕してくれないときは賃借人が修繕できるだとか(607条の2)、目的物が全部滅失したら賃借権が消滅するだとか(616条の2)。
敷金の性質が明記されたり(622条の2)、原状回復義務に通常損耗は含まれないことが明記されたり(改正621条)とかは、まあ重要な改正ではあるのですけど、実際の場面として、特に大幅に何かが変わったわけではない(基本的には判例の明文化)ので、条文確認しといてね、といったところ。
では、今日はこの辺で。
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