2014年2月19日水曜日

交通事故による損害の分類

司法書士の岡川です。

交通事故等の不法行為による損害の種類(項目)には、いろんな分類の仕方があるのですが、まず、「財産的損害」と「非財産的損害」があります。

「財産的損害」とは、被害者の「財産」に対する不利益(事故がなかった場合と比べての財産状態の差額)です。
事故によって出費をすることになったり(例えば治療費)、事故によって財産の価値が損なわれたり(新品の高級車が事故車となって評価額が下がる等)すれば、これは皆「財産的損害」です。

言い換えれば、財産的な価値があるものを失う場合をいいます。

財産的損害と対になるのが「非財産的損害」です。

「非財産的損害」とは、交通事故のように自然人(個人)が被害者となる場合は、「精神的損害」と同義です。
すなわち、事故によって怪我をした場合の「苦痛」が精神的損害です。

この、精神的損害に対する賠償金のことを、「慰謝料」といいます。

「損害賠償=慰謝料」と誤解されている方もいますが、慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償のことをいいます。
病院の治療費とか、車の修理費は慰謝料ではありません。


次に、「財産的損害」には、「積極損害」と「消極損害」があります。

積極損害とは、今ある財産が滅失したり毀損された場合、つまり、治療費や交通費のような金銭の出費があった場合や、事故車の評価額が下がったような場合は、いずれも積極的損害です。

これに対して、「消極損害」とは「事故がなければ得られた利益(が得られなくなった)」という損害です。
「得べかりし利益」あるいは「逸失利益」といったいい方をします。

具体的には、事故に遭って会社を休んだら、その分の給料を減らされたとします。
事故に遭わなければ出社してその分の給料も貰えていたはずなので、それがもらえなくなったとすれば、この差額が消極損害となります。
あるいは、事故に基づく後遺障害により労働力が一部失われたりすれば、将来の減収が観念できますので、これも本来稼げたはずの金額との差額が消極損害です。


これらの分類とは別に「人的損害」と「物的損害」に分けることもできます。

人的損害(人身損害)とは、被害者の身体に対する被害(つまり、怪我と死亡)から生じる損害です。
積極的損害のうちの治療費や、消極的損害のうちの休業損害、精神的損害(慰謝料)、これらは全て人的損害ですね。

これに対し、物的損害とは、「物」の損害です。
車同士の事故なら、車が壊れた場合の修理代やらレッカー代やらが物的損害です。

いわゆる「物損」っていうやつです。

人損と物損では、賠償方法や事故処理に違いがあるので、区別して考える実益があります。
例えば、純粋な物損事故では、犯罪が成立しません(「過失器物損壊罪」というのが存在しないため)。


このように、交通事故(に限らないのですが)の損害は、いくつかに分類ができます。
分類できるということは、その中にいくつもの種類(損害項目)があるというわけで・・・。

その辺の話は、また次回です。

では、今日はこの辺で。

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交通事故の損害シリーズ
1.交通事故による損害
2.交通事故による損害の分類 ← いまここ
3.交通事故の損害項目
4.治療関係費(交通事故の損害各論)
5.入通院の費用(交通事故の損害各論)
6.葬儀関係費(交通事故の損害各論)
7.休業損害(交通事故の損害各論)
8.交通事故の慰謝料(交通事故の損害各論)
9.逸失利益(交通事故の損害各論) 

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