交通事故の損害項目の各論第4弾です。
今日は、休業損害について。
休業損害とは、読んで字のごとく、休業によって生じる損害です。
例えば給与所得者(サラリーマン)の場合がわかり易いのですが、事故で怪我をして、会社を休まなければならなくなったとします。
「ノーワーク・ノーペイの原則」(働いていない分は給料が支払われないという原則)がありますので、会社を休めば給料は減額されることになります。
交通事故に遭わなければ出勤できていたはずで、出勤できていれば、その分の給料が支払われていたはず。
よって、交通事故が原因で出勤できずに支払われなかった額は損害となるわけです。
これを休業損害といいます。
「サラリーマンが会社を休んで給料が減額された」という事例であれば、減額された分(もちろん、事故にかこつけてズル休みした分は除きます)が損害なのでわかり易いのですが、どこまでが休業損害と認められるかは、色んな事情により問題が生じます。
1.有給休暇をとった場合
事故で休む時に、律儀に有給休暇とした場合、休んでも給料は減らされません。有給ですから。
しかし、有給休暇は労働者の権利として自由に使うことのできる休暇であり、それ自体が財産的価値を有します(といっても、それを売ったり買ったりできるものではありませんが)。
事故によって休養のために使われることになれば、その財産的価値が侵害されたことになります。
そこで、有給休暇をとったために、現実にはその間も給料が支払われていたとしても、休業期間に含めて算出した額が休業損害として認められます。
2.事業主の場合
休業しなければ得られていたはずの売上額から、その売上のために必要な経費を差し引いた額が休業損害となります。ただし、賃料とか光熱費とか従業員の給料等といった固定費については、休業中であっても(すなわち、売上が無い場合も)必要になってきますから、これは差し引かずに計算します。
まあ、当然といえば当然です。
売上額は、基本的には確定申告書を基準に算定します。
そのため、売上を過少申告していたり、経費を架空計上していたりしたら、面倒なことになります。
日頃から、税務申告は正直に行っておきましょう。
なお、自分が休む代わりに誰かを雇用した場合などは、その支出分も損害として認められます。
3.専業主婦(主夫)の場合
専業主婦(主夫)は、怪我で入院したからといって、給料が減るということはありません。しかし、専業主婦の家事労働は、現実に対価を得ていないとしても、財産的な利益を生じるものであると考えられています。
したがって、休んだ分は、休業損害として認められます。
具体的な額は、女性労働者の平均賃金を基に算出されることになります。
また、臨時に家政婦を雇った場合などは、必要と認められる範囲内でその費用も損害と認められます。
4.無職の場合
基本的には、休業損害は認められません。休業も何も、最初から仕事していなければ減収もなく、損害が生じていませんからね。
ただし、就職予定があった場合や、近いうちに就職する蓋然性があった場合などは、予定された時点以降は就職して収入を得られていたはずなので、そこで得られたはずの収入分が休業損害として認められます。
現実問題として、そう簡単に仕事を休めないということはあるでしょうが、最初にきちんと治療をしたり安静にしておかなければ、一生後悔することにもなりかねません。
休業損害は補償してもらえるということも頭に入れて、対応を考えましょう。
ちなみに、いうまでもありませんが、「大した怪我ではないから働けるのに、交通事故を口実に働かない」というのは単なるサボりですので、給料がもらえず、休業損害も認められない、ということになります。
そこは誠実さが必要です。
では、今日はこの辺で。
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