司法書士の岡川です。
以前、私法と公法の話を書きましたが、法律の分類には、他にもいろいろあります。
大きな分類としては、実体法と手続法に分けることができます。
実体法というのは、権利の変動(その要件や効果)など、法律関係それ自体を規定する法です。
例えば、私法上の法律要件と効果を規定する民法や、犯罪の要件とその効果(罰則)を規定する刑法などが実体法です。
商法とか会社法とかもそうですね。
これに対し、実体法に定められた法律関係を実現させるための手続きについて定めたのが手続法です。
民事訴訟法や刑事訴訟法が手続法に該当します。
民事執行法とかもそうですね。
一般的には、民法が実体法で民事訴訟法が手続法、という風に考えておけばよいのですが、ある法律の中に実体法としての規定と手続法としての規定が混在することもあります。
厳密にいえば、民法の中にも、手続きについて定めた条文が存在するので、その限りにおいて手続法だといえます。
ところで、「実体法」と似た名前の「実定法」という概念もありますが、意味的には全く異なります。
「実定法」というのは、普遍的に存在すると観念される「自然法」の対立概念で、人の手により現実的に定立され、ある範囲(時代や社会)において実効性を有する法です。
成文法(制定法)であれ、慣習法であれ、判例法であれ、とにかくある社会(例えば現在の日本)において、現実に適用されるものとして存在する法が実定法ですね。
「人を殺してはならない」というのは、ほぼ普遍的に妥当するルールです。
これを自然法というかどうかはさておき、こういう「人を殺してはならない」みたいな漠然としたルールはどの国にも(仮に「国」がなかったとしても)ありますが、どの国においてもそれがそのまま裁判所で判決の基準になるわけではありません。
これに対して、日本においては刑法199条で「人を殺した者は、死刑または無期若しくは5年以上の懲役に処する」と規定されています。
日本において殺人に関するルールを規定しているのは刑法199条であり、これが実定法だということになります。
もっとざっくりといえば、我々が普段「法律」といっているものは全部実定法です。
なので、もし「実定法上の根拠は何か」とか聞かれたら、「お前のその主張は、何法の何条に書いてるんや?言うてみい!」というような意味です。
覚えておきましょう。
なんか、実定法の話の方が長くなりましたが、今日はこの辺で。
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