2020年7月31日金曜日

給与ファクタリングは何がどう違法か

司法書士の岡川です。

給与ファクタリング(給料ファクタリング)業者が大阪府警に初摘発されたというニュースがありました。

「給料ファクタリング」初摘発 業者の男女4人逮捕(日本経済新聞)

「給料を支給日前に受け取れる」などとうたい無登録で金を貸し付けたとして、大阪府警生活経済課は29日、コンサルタント会社「SONマネジメント」(東京都)の社員、岩田俊一容疑者(29)=山形市=ら男女4人を貸金業法違反(無登録営業)の疑いで逮捕した。府警によると「給料ファクタリング」と呼ばれる新たな手口で、摘発は全国初。

給与ファクタリングというのは、「給料を買い取る」という形で「給料日前にお金が受け取れる」(というふうに表向きは宣伝されている)サービスです。
少し前から流行りだしたサービスですが、最近特にコロナの影響もあって、生活に困窮した人を中心に利用者が増えています。

しかし、このサービスは以前から違法性が指摘されており、今回、ついに大阪府警は犯罪だと認定し、業者の人間を逮捕しました。


では、何がどう違法なのか。


そもそも「ファクタリング」(factoring)というのは、一般的には売掛金等の債権をファクタリング業者に売って資金調達する手法をいい、それ自体が違法な手法ではありません。

売る側にとっては、売掛金(売買代金の支払い日が翌月とかで、すぐに請求できない)等の債権を売却(債権譲渡)することで、資金繰りに困ったときに、持っている債権をすぐに現金化できるというメリットがあります。

当然ながら、業者は債権額より割り引いた金額で買いとる(例えば100万円の売掛債権を90万円で買い取る)ので、買い取った債権を行使して全額回収できれば、その差額が利益となります。


このファクタリングの仕組みで、売買の対象となる債権が売掛金ではなく給与債権になった(かのような体裁がとられている)のが、給与ファクタリングです。

つまり、(業者の表向きの説明でいうと)サラリーマンの給与債権(権利はあるけど給料日じゃないと支払ってもらえない)を、給料日前に業者が買い取る。
給料日前に現金がほしいサラリーマンにとって、即日現金が手に入るメリットがあるし、他方、業者は、給料額より安く買い取るので、実際に給料日になって回収できたら買取額と給料額との差額が利益になる。

…という(ことになっている)サービスですが、実際はそんな単純な話じゃないわけですね。



まず、労働者の給料(賃金)というのは、「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と法律で決められています(労働基準法24条)。

私的自治の原則からすれば、自分の債権は自分で自由に処分できるのが基本ですが、給料は例外です。
給料というのは、労働者にとって生活の基盤ですから、確実に労働者が受け取れるよう、労働者以外の者に支払われることが特に法律で禁じられているのです。


…と、いうことは、給与ファクタリング業者は、買い取った給与債権を行使して労働者の勤め先の会社から回収することはできないということです。
何故なら、勤め先の会社としては、どこぞの業者が「給与債権はうちが買い取った」と言ってきたとしても、その給料は、直接従業員に支払わなければ法律違反になるからです。

なので、このままだと買い取った側は大損ですから、給与ファクタリングは、実際には「給与債権を売った客に給与債権を買い戻させる」という仕組みになっています。

例えば、業者は、給料日前に10万円の給与債権を5万円で客から買い取ります。
そして、給料日になれば、客がその10万円の給与債権を業者から10万円で買い戻すという契約になっています。

これなら、実際に勤め先の会社から給料を受け取るのは従業員である客だから労働基準法上の問題は生じません。
業者は、5万円で買い取った給与債権を10万円で(元の客に)売りつけることができるので、5万円の儲けです。


しかし、「買取り」と「買戻し」という“建前”にはなっていますが、買い取っても行使できない給与債権が移転したかと思えば元に戻っている。

ということは結局のところ「給料」とか、この仕組みの中では実質的には全く関係ないんですよね。

関係ない「給料」のことは脇に置いて、実際のお金の流れを見れば、「後日10万円を支払う約束で5万円を交付してもらい、実際に支払期日(給料日)が来れば10万円を支払う」という契約に過ぎません。


つまり、「金を貸して返してるだけ」ですね。

実質的には「利息付きの金銭消費貸借契約」そのものです。


ところが、業者は「借金ではない」ということを、やたらと強調します。

借金じゃないから「信用情報に載らない」「載っていても利用できる」と、借金じゃないことが良いことであるかのように宣伝しています。


しかし、本当の狙いは、借金ではないという建前により、出資法や利息制限法の上限金利を上回る手数料(という名の実質的には利息)を設定しているところにあります。

実際に、給与ファクタリング業者は、給料を半額で買い取ったりするのです。
給料を半額で買い取るということは、客は、受け取った額の倍額で買い戻さないといけないことを意味します。

簡単にいうと、5万円借りたら1か月後に5万円の利息がついて合計10万円を返すことになる。
これ、1か月で100%の利息が付いてるわけですから、年利換算したら1200%になりますね。

ひとむかし前の漫画なんかで「トイチ」というギョーカイ用語が出てきますが、これは「10日で1割」という違法な利息を意味します。
トイチは、暴利の代名詞みたいに言われますけど(いや、実際暴利なんですが)、年利換算したら365%です。
それをはるかに上回ります。


利息制限法の上限は20%ですから、これが貸金だということになれば、当然こんな1200%(合法的な上限の60倍!)とかいう高利は違法です。
だから、「借金ではない」と言い張るわけです。


しかし、金融庁は、給与ファクタリング業は貸金業だという見解を示しました。

給与の買取りをうたった違法なヤミ金融にご注意ください!

また、裁判所においても、給与ファクタリングが実質的には貸金業法や出資法にいう「貸付け」にあたると認定した裁判例が既に複数出ています。


給与ファクタリングが「貸付け」であり、その業務は貸金業だということになるとどうなるか。

貸金業を営むには、貸金業登録をしないといけません。
給与ファクタリング業者は、貸金業登録をしていないことが一般的ですから、これらは全部無登録の貸金業、要するに「ヤミ金」だということになります。

当然、上記のような金利での貸付けも、利息制限法どころか出資法や貸金業法に違反した暴利行為だということになります。
あまりの暴利は、公序良俗に反して無効になり、不法原因給付として、その元本すら返還する義務を負わないというのが判例です。

つまり、法的には、給与ファクタリング業者は、普通のヤミ金と全く一緒の扱いということです。


これは民事の話ですが、刑事の話でも、貸金業法違反(無登録営業)は犯罪ですから、今回の逮捕に至ったということですね。
出資法違反も犯罪ですから、こちらもでも再逮捕されるかもしれません。


というわけで、お金に困っても、給与ファクタリングを利用しないようにしましょう。

どんなにしっかりしたホームページがあっても、きれいごとが書かれていても、それは「ヤミ金」です。


仮に、貸金業登録をしていて、かつ、10万円の給料を9万9500円くらいで買い取ってくれる(9万9500円借りて1か月後に10万円返す)という良心的な業者があれば話は少し変わりますが、そうでなければヤミ金に手を出すのと一緒です。


本当に生活に困ったら、市役所とかで相談するとか、色々方法があります。
債務整理して生活再建をするなら、お近くの司法書士や弁護士にご相談ください。

たとえば高槻市役所には、生活に困った人の相談に応じる「くらしごとセンター」があります。

そういえば、高槻市役所の近くには、岡川総合法務事務所っていう債務整理の相談にも応じてくれる司法書士の事務所もありましたね。

岡川総合法務事務所のお問い合わせはこちら

では、今日はこの辺で。

2020年7月7日火曜日

「つるの屋」について

司法書士の岡川です。

つるの屋のご主人が亡くなられたという情報に触れた。
石破茂議員がブログで言及した情報が、ちょっと遅れて私のもとにも回ってきました。

「つるの屋」の思い出など

他の情報を探してみると、どうやら、もう1か月ほど前に急逝されたようです(享年60)。


ご主人といっても、二代目のほうですので、昔からの常連さんからすると、どっちかというと「お兄さん」という認識でいた客も多いかもしれません。


「つるの屋」というのは、慶應義塾大学塾生(慶應では「学生」のことを「塾生」という)で知らない者はいないといっても過言ではないくらい馴染みのある、塾生(や教授ら)御用達の大衆居酒屋です。
慶應関係者が在学中のことを語る際にしばしば言及されてきたため、ウェブメディアの記事等にたまに登場しますね。


絵に描いたような「古き良き学生街の居酒屋」といった感じの店で、けっこう広めの店内の壁には、歴代の様々なゼミの卒業生が贈った大量のペナント(「○○ゼミ何期生」のような刺繍がされている三色旗の飾り)がびっしりと飾られており、入るだけで慶應の歴史を感じられます(逆に、慶應に縁のない人が入ると、ものすごくアウェー感を感じられたかもしれません。)。

私は、酒飲みではないのですが、それでもゼミやサークルの後や友人との飲み会で何度も足を運んだものです。
行けば必ずといっていいほど、どこかのゼミが飲み会をしていましたし、誰かしら慶應の現役生か教授か卒業生に出くわしました。


入り口付近で席が空くのを待ってたりしたら、出てきた見ず知らずの60代くらいの陽気なオヤジたちのグループに「君らはどこのゼミ?」とか声をかけられたりもします。
とはいえ、私の所属ゼミはかなり若いゼミ(私が1期生なので)だったので、「佐藤ゼミです」と言っても「あー知らんな~。ま、がんばってな!」とか言われるわけです。
何を頑張るのかよくわかりませんが、こういうときはとりあえず「はい、がんばります先輩!」とでも答えておけばよいのです。


twitterなんかを見てると、やはり名物料理の「豚黄金」(正式名称は「豚ロースの黄金揚げ」らしい)に言及するものが多く見られます。
アレ旨かったけど、結局なんだったんだろう(豚の竜田揚げ?っぽいのに何か餡がかかってて大量のネギが乗ってるのです)。

個人的には、キャベツ(正式には「キャベツのバター炒め」らしい)が好きでした。
キャベツをバターで炒めてブラックペッパーで味付けしただけ(?)っぽい料理なんですけど、やみつきになる系の一品です。



私は、卒業して大阪に戻りましたので、卒業後は2~3回しか行っていません。

最後に行ったのは、昨年の12月。
ゼミのOB会が三田で開催されたので、その二次会で何年ぶりかに、つるの屋にお邪魔しました。
ゼミの指導教授と一緒だったので、ご主人から「君らは何期生?」と聞かれ、「1期生です」と答えたら、「あー、あの頃の先生を知っている世代か!」と。

その日は、行ったら既にテーブルの上に鍋のセットが用意された席に案内され、一応「ここ予約席じゃないですか?」と聞いたのですが、「いいのいいの。食べれるでしょ」と言われ、注文もしてない鍋を皆で頂きました。
別に、シェフのオススメが自動的に出てくるスタイルの店というわけではありません。
でも、そんな細かいことは誰も気にしない、そんな感じの店でした。



創業以来50余年やってこられた店ですが、店が入っていたビルが非常に古く、建物の建て替えのために出ていくことになっていました。
私が行った昨年12月で店舗が閉鎖される予定だったわけで、最後のタイミングで三田でOB会が開催され、二次会の時間帯に席が空いていて入ることができたのは、ラッキーでした。


5月頃にリニューアルオープンの予定だったようで、心待ちにしていた慶應関係者もたくさんいたと思われますが、結局、ご主人が急逝されたために完全閉店ということになったようです(石破議員情報ですが)。
何かの機会に新店舗も行ってみたかったのですが、残念ですね。


つるの屋のご主人、渡辺孝さんのご冥福をお祈りします。



では、今日はこの辺で。

2020年7月3日金曜日

毎日放送(MBS)の情報番組ミント!に出演

司法書士の岡川です。

もう日付が変わったので昨日の話になりますが、7月2日(木)に、毎日放送(MBS)でやっている関西ローカルの情報番組に出演させていただきました。





前日、元後見人の弁護士が横領で逮捕されたという報道があり、その絡みで成年後見制度の現状(横領事件などの問題も含む)に関する解説をしてほしいという出演依頼によるものです。

私に直接依頼がきたわけではなく、リーガルサポート大阪支部に来た依頼ですけどね。
(私は現在、大阪支部の副支部長をしていますので)

番組は非常に限られた時間で進行しましたので、少し補足的なことを書いていこうかと。


番組の冒頭にも述べたとおり、今回弁護士が逮捕された事件は、元後見人による横領事件ではありますが、実際は、後見が終了した後の話です。

しかも、おそらく財産の引渡しも終えており、その後に、改めて相続人から遺産分割調停の依頼を受け、さらに調停成立後に銀行預金の解約手続の依頼を受けたようです。
その相続人からの委任による解約手続の際に、横領をしたという事件です。
つまり、本件において元成年後見人という立場はあまり関係がありません。

ただ、当初の報道が、「元成年後見人」が大きく報じられたということもあり、改めて成年後見制度にスポットを当てて解説したというのが今回の特集(?)です。


さて、番組中でも解説しましたが、成年後見人による不正は、専門職によるものが多いというイメージがあるかもしれませんが、実は、大多数は親族後見人によるものです。



番組では、後見制度支援信託の導入が横領の減少の理由であるという紹介がされましたが、支援信託は、基本的には親族後見人に適用されるものです。
後見制度支援信託によって、親族後見人による不正が大幅に減少した結果、不正事件総数(被害総額)も大幅に圧縮されたわけです。

(※補足:少し指摘があったので補足。前提として、個人的には後見制度支援信託制度が必ずしも良い制度だとは考えておりませんし、専門職団体での多くの見解も同様です。この制度は資産の大部分を凍結させるものであって、「財産保全」に全力投球した結果、必ずしも本人の利益に適うものではない。さらには、制度が重厚で専門職の負担も大きく、本人の経済的負担もあります。現在は、後見制度支援預金制度というのもあり、こちらは手続的にはかなり軽量化されていますので、今後はそちらが主流になるでしょう。ただ、客観的事実として、2014年以降の親族後見人による不正減少の「一因」であったことは確かなので、番組で用意された支援信託の説明自体は否定していません。ただ、もちろん本番では、支援信託が不正減少の全てではない、というところまで解説しています。)

番組中でも解説しましたが、この不正事件の大部分を占める親族後見人による不正も、必ずしも悪意(これは日本語の普通の意味の「悪意」です)をもって財産侵害をしているものではなく、法律や制度の理解不足から「これくらいの金額は、(自分のために)使ってもいいだろう」という甘い観測が、法的にみれば不正に当たるということが多く含まれています。
もちろん、「悪意がないから許される」というものでもないわけでして、そこは不正認定されることは当然ではあるのですが、少し「横領」のイメージからズレがあるかもしれません。

さらに、親族後見人の不正が大多数であるといえども、さらにその外側には、圧倒的多数の「不正を行っていない親族後見人」が存在するわけです。
そして、それよりさらに多くの「不正を行っていない専門職後見人」が存在し、成年後見制度を健全に運用しています。

もちろん、不正というのは1件たりとも許されないので、ごく少数だから良いというものではありませんが、その1件があるから制度そのものがダメな制度というふうな極論に振り切った理解をしてはいただきたくない、と思います。

これは、成年後見制度によって助かった高齢者や障害者の方々を多く見てきている者としての感想です。


後見人の不正防止に関しても、全く機能していないわけではありません。

例えば今回の弁護士の横領の件ですが、成年後見人として自由に預金を引き出す権限を有していたにもかかわらず、成年後見人であった(本人が生きていた)間は、横領をしていなかったわけです。
これは、成年後見人である間は、広範な権限がある一方で、常に裁判所の監督下にある(定期的に報告しなければならないので、横領したら発覚してしまう)ことから、不正ができなかったのかもしれません。

結局、本人が亡くなって後見人としての地位を退いた後、すなわち裁判所の監督から抜けた後で、相続人から預かった財産を横領をしたわけです。


例えば、犯罪機会論的な話でいうと、「監視性」というのは、犯罪抑止の要素であり、定期的な報告で常に管理財産をチェックされている状況というのは、犯罪(横領)の機会(犯罪をしやすい環境)を奪うという意味で、一定の犯罪抑止効が期待できます。

もちろん、人類の歴史上、いかなる刑事政策上の理論に則った施策も、犯罪を「0」にすることに成功していない(そして、今後も犯罪が「0」になることはあり得ない)のと同じく、それだけでは後見人による不正を「0」にすることはできません。

犯罪対策というのは、「ある程度の抑止効果」が認められる施策を積み重ねていき、件数を限りなく「0」に近づけるしかできないわけです。

が、今回の弁護士に関してはむしろ、この抑止効果が機能していた例なのではないかとも考えられます。


それはさておき、最後は、誰が成年後見人になるのか?というお話でしたね。



最後の最後で、「報酬ゼロ」という事例を紹介されました。
番組中でも説明したとおり、我々専門職は、業務(仕事)として、報酬をいただいて後見業務を行っていますが、中には報酬ゼロで受けている案件もあります。

「専門職の皆さんは、なぜ報酬ゼロで受けるのですか?」と問われたとき、「(後見業務は)公益的な側面があるので、制度の利用を必要としている方が相談に来られたときに、『報酬が払えないなら無理です』とは言い切れない」という趣旨の回答をしました。

ここで時間の関係もあって、何か私がすごく使命感の強い素晴らしい人みたいな感じでコーナーが終わってしまったので、私個人的には好感度も爆上がりで何ら問題ないんですが、公正を期すために補足しておくと、このような無報酬案件は、多くの専門職が少なくとも1件や2件程度は受けているものです。
多い人だと、そういうのを3件でも4件でも5件でも受けている。
私が特別に、使命感から引き受けているわけではありません(私よりたくさん、無報酬案件を引き受けている専門職はたくさんいます)。
そこは、正しく認識していただければ、と思います。

無報酬案件の話、番組の打ち合わせでもスタッフの方にしたんですけど、ものすごく驚かれました。
本番でも出演者の皆さん驚いていましたね。
我々にとっては、かなり普通の話だったので、逆に「え、そんなに驚かれる?」というレベルだったのですが、実は、そういうのが現状なのです。


そして、このような使命感に頼った制度は、今まさに限界を迎えているところです。
まあ平たく言えば、「これ以上は、もう受けきれない」という声が噴出しているわけですね。

お金がなくて必要なサービスが受けられない方については、本来的には、公的な制度で支援するのが筋なのですが、現状は、民間事業者の使命感(一種のボランティア)に頼り切った構造になってしまっています。

この辺の問題点も、番組で触れられたら良かったんですけど、今回のテーマからだいぶそれてしまうので触れられませんでした。
また何かの機会にでも。


とまあ、なんせスタジオでガッツリ解説するためのテレビ出演とか初めてだったので、言葉足らずで何か誤解を生んだり、誰かを不快にさせたりしてないかなとか気にしたりもしてるんですけど、まあ、私の周りでは概ね好評だったので良かったです。

また機会があれば、出演したいですね。

次は、例えばシェルティをもふもふしながら、その魅力を30分くらいかけて語ったりしたいです。

では、今日はこの辺で。

2020年6月1日月曜日

大阪府休業要請外支援金について

司法書士の岡川です。

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、生活様式や業務形態に多大な変化が起きています。

感染拡大の第一波はひとまず落ち着いた(終息したとはいえないが)ようにもみえるところ、公的な金銭的支援も本格的に開始しています。

特に、事業者向けの支援制度は、かなり多種多様なものがあります。
国からの支援については、経済産業省のホームぺージにまとまっているので、そちらをご参考ください。

さて、事業者向けの支援は、各自治体独自のものもあります。

その中で、大阪府は、大阪府休業要請外支援金という制度を作っています。
これは、休業要請支援金(府・市町村共同支援金)の対象とならなかった(要するに休業要請の対象外の)事業者に対する支援です。

休業要請支援金に比べると額は少なくなりますが、大阪府内に事業所を有する中小企業や個人事業主が対象となっており、休業要請の対象にならなかった事業者についても負担となっている家賃等の固定費を支援する目的のものです。

詳しい要件等は大阪府のホームページで確認していただきたいのですが、個人事業主については、専門家による申請書類の事前確認の制度があります。

これは、申請書を提出する前に専門家(行政書士等)に確認を受けることで、(大量の事務処理に追われる役所の負担を軽減して)申請手続を円滑に進めるために設けられたものです。
事前確認は必須ではありませんが、事前確認が行われなかった申請は、支給までに時間がかかるようです。
(なお、基本的には書類が揃っているかのチェックであって、申請書類の作成支援や、書類の内容をみて審査をするわけではありません。)


この事前確認は、休業要請外支援金の申請しようとする個人事業主が無料で専門家に依頼することができます

当事務所においても、行政書士事務所として無料で事前確認を行っています。
→大阪府休業要請外支援金について

当事務所は高槻市(高槻市役所の近く)にありますので、特に高槻市にお住まい(あるいは事業所を構えている)の個人事業主の皆さんで、事前確認をご希望の方は、事務所ホームページの問い合わせページからお問合せください(もちろん、市外の個人事業主の方でも構いません)。

→お問い合わせはこちら

なお、電話をいただくより、問い合わせフォームからメールでご連絡いただいたほうが、スムーズに予約がとれます。

では、今日はこの辺で。

2020年5月11日月曜日

三権分立と国民との関係

司法書士の岡川です。

ここ数日で、やたらと三権分立の話題を目にします。

きっかけは検察庁法改正に絡んだもので、この改正が三権分立に反するとか反しないとかいう話からのようです。


そこから派生したのか、何やら「首相官邸のホームページに掲載されている三権分立の図が間違っている(意図的に改竄されている)」といった指摘が出てきているようです。

(首相官邸HP「内閣制度の概要」より)

どこがおかしいかというと、「内閣」と「国民」との間の矢印が逆だと。
一般的には(教科書などでは)、国民から内閣に対して「世論」という矢印が出ている以下のような図が使われているからですね。


(衆議院HP「三権分立」より)

首相官邸HPの図を見て、「三権分立を理解していない」とか「行政による国民の監視(独裁・主権者国民の上に君臨)を意味している」とか「安倍政権の独裁の意識が云々…」といった批判の声が出ているようです。


しかし実は、「教科書に載っているのと違う」といっても、必ずしも首相官邸HPの図が三権分立の説明として間違いであるとはいえません。
また、首相官邸HPの図も、国民の上に行政が君臨することを意味しているとも読み取ることはできません。


順を追って解説しましょう。

そもそも、三権分立とは、国家権力を「立法」「行政」「司法」の3種類(三権)に分類し、それぞれの権力を担う国家機関を分けることで権力の集中を防ぎ、国民の自由と権利を保護するという考え方です。

三権分立というシステムは、ただ単に機関を分けるだけでは機能しませんので、三権が相互に抑制と均衡(チェックアンドバランス)を保つ仕組が必要となります。

そこで、日本国憲法において、上記のいずれの図にも三権の間に双方向に矢印が引かれているとおりの制度が用意されています。

この抑制と均衡(チェックアンドバランス)の仕組こそが、「三権分立」の本質的部分です。


この点において、首相官邸HPの図も、少なくとも「三権分立」に関して全く間違ったことは書かれていません。
正しく、「三権」が「分立」されて、その間の抑制と均衡の仕組が説明されていますからね。


三権分立の問題でなければ、何の問題なのか。
つまり、この三権と国民との関係、図でいうと、三権と真ん中の「国民」との間の矢印は何なのかです。
ここに首相官邸HPの図と一般的に用いられている図とで違いがあるわけですが、「三権」の「分立」の話ではありません。


ここは、三権と主権者国民との関係ですから、民主主義(民主制)に関する仕組、言い換えれば、国家権力の民主的統制(コントロール)に関する仕組を説明している部分です。


例えば、立法機関(国会)に対しては国会議員の選挙という形で、司法(裁判所)に対しては、極めて限定的ではありますが、国民審査という形で、それぞれ民主的統制を及ぼしています。

これに対応する形の、行政機関(内閣)と国民との間の、民主主義に関する仕組とは何か。


例えばアメリカでは、行政のトップである大統領は選挙で選ばれるので、ここには「選挙」という語が入ることになるでしょう。

しかし、そのような、行政機関に対して国民が直接的に民主的統制を及ぼす仕組は、日本国憲法においては用意されていません。

社会の教科書では、三権分立と同時に「議院内閣制」という言葉も習ったと思います。

日本の議院内閣制は、アメリカの大統領制とは異なり、立法機関である国会が、国会議員の中から、行政のトップである内閣総理大臣を選びます。
また、国会(衆議院)で内閣不信任決議をされると、内閣は総辞職をしなければなりません。
そして、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」(日本国憲法66条3項)のです。

つまり、日本国憲法が想定する議院内閣制の下では、行政に対する民主的統制は、国会を通じた間接的なコントロールということになります。


ということは実は、図でいうと、国民と行政との間には「矢印が無い」というのが一番正確だということもできます。


一般的に使われている図では、ここに「世論」という矢印が描かれており、首相官邸の図ではその「世論」が消されていることも一つの批判になっていますが、図内の「世論」以外の矢印は全て、「三権分立」や「民主主義」に実効性をもたすために日本国憲法が用意した諸制度です。

これに対し、「世論」自体は、行政を統制するシステムではありません。

確かに世論自体は重要な要素ではありますが、それをここに図示するのであれば、「世論を行政に反映させる具体的な仕組み」でなければならない(そして、その仕組は日本国憲法では存在しない)わけです。

ここに「世論」という矢印を描いてしまうのは、国民と国会との間の矢印(「選挙」とある部分)に「民意」とか書くようなもので、完全に異質なものです。
そのため、この「世論」というのは、ものによっては、括弧書きにされていたり、矢印が点線とか薄い色とかに変えられていることもあるようです。


ところで、首相官邸HPの図では、内閣から国民に対して「行政」という矢印が引かれています。
ここで「矢印の向きが違う」と批判されているわけですが、「行政」という国家権力の作用をこの図に書き込むのであれば、それはこの向きで正しいわけです。
仮に、ここに「統制」とか「コントロール」とか書かれてたら流石にヤバいわけですが、そうではありません。
だからこの向きに関しては、これはこれでよいのです。

もっとも、上記の説明のとおり、ここに「行政」と書くのも異質といえば異質です。
何故ならここだけ三権分立とか民主主義の話とは違う内容の矢印になっているからです。

何でこんなこと書いたのか…。


ただよく見てください。

この図、そもそも「三権分立」とか「民主主義」の説明ではなく、「現行憲法下の内閣制度」の説明のページに記載されている図なんですよね。
つまり、このページは、「内閣→行政→国民」というこの部分(行政という国家作用を担っているのが内閣ですよ、という話)が中心的話題なわけです。

だから、この矢印は他の矢印と区別して、なんなら、むしろもっと目立つように強調した矢印で「行政」って書いておいても良かったくらいなのです。

中途半端に他の矢印と合わせて(それでいて矢印の方向だけ逆にした)もんだから、わけのわからない印象を与えたわけですね。



ちなみに、Internet Archiveで調べればすぐわかることなのですが、この図は少なくとも20年前から首相官邸で使われていた図です。
「いつの間にか改竄されていた」とか「安倍政権の意図が反映された」とかいうものではありません。
そういう批判は完全に的外れです。



まあ、そういうわけで、結論としては、首相官邸の図を見て、「安倍政権は三権分立を理解していない(破壊するつもりだ)」という批判をすることは、色んな意味で誤っているといえます。


実際に安倍政権が三権分立を理解・尊重しているかどうかは知りません。
その点に批判的意見があるのは構わないと思います。

ただ、少なくともそれは首相官邸HPの図とは全く関係のないことです。


では、今日はこの辺で。