2013年9月19日木曜日

登記簿には何が載っているか?

司法書士の岡川です。

これまでに、登記の基本的な説明をしました(→「登記とは何か」「登記はどこでするのか」)が、今回は、それぞれの登記について、何が載っているのかをご紹介します。


まず、不動産登記ですが、不動産登記簿には、不動産を特定する情報(表示登記)と、権利変動についての情報(権利登記)が記録されています。

権利変動の最も重要なのが所有権です。
つまり、この不動産の現在の所有者(持ち主)は誰か、という情報です。
登記簿の所有者を示す欄(これを「甲区」といいます)に載っている人の名前が、いわゆる不動産の「名義」というやつです。
不動産を相続した場合や売却した場合に行われる「不動産の名義書換え」というのは、この所有者を示す欄の情報を、次の所有者(相続人や買主)に変更することをいいます。
実際には、名義人を「書き換える」のではなく、次の欄に新らしい名義人を追加する「所有権移転登記」という登記をするのですが、「移転登記」というより「書き換え」といったほうがわかり易いので、一般の方に対しては「名義を書き換える」とか「名義人を変更する」と説明することもよくあります。
他方、司法書士同士では「書き換える」とか「変更する」といったことはあまり言いません。
なぜなら、「変更登記」というのは「移転登記」とはまた別にあるからです(実務家同士では、正確に表現する必要があるわけです)。

所有権の他にも、抵当権(いわゆる「担保」です)とか地上権(土地の利用権です)といった、その不動産に関する様々な権利関係が登記簿上に載っています。


次に商業登記。
商業登記の中にもいろいろあるのですが、典型的には、会社の登記ですね。
その会社がどういう会社なのか、ということが商業登記簿に書かれています。

具体的には、会社の本店の所在地はどこか、どういう組織になっているのか(取締役会は設置されているのか、監査役はいるのかといったこと)、役員は誰か、代表権を持っている人は誰か、資本金はいくらか、といった情報です。
個人に置き換えると、「戸籍と住民票を足したようなもの」だと考えるといいかもしれませんね。

実は、会社は、設立登記をして初めて成立します。
不動産の売買は、別に登記をしなくても売買自体は成立します(ただ名義が書き換わってないので危なっかしいだけ)が、商業登記については、登記が必須になっています。
また、役員が変わったりしたら、役員変更登記を必ずしないといけません。
会社の実態を公示して、取引相手を保護するためのものですから、常に最新の情報に更新する義務があるのです。
この登記義務に違反すると、過料に処される場合があるので注意しましょう。


他にも立木登記簿とか船舶登記簿とかいろいろあるのですが、マニアックすぎるので省略。

ところで、最近の法律では、「登記簿」ではなく「登記ファイル」という語が使われます
例えば後見登記については、登記簿ではなく登記ファイルとなっています。

昔は本当に「登記簿」というバインダーに閉じられた紙製の冊子が使われていたのですが、今はもうそんなアナログな物は使われていないので、新しい法律に「簿」という文言を使うはクールじゃなかったんでしょう。
後見登記では、後見等登記ファイルに被後見人の情報と後見人の情報(氏名と住所くらいですが)が記録されています。
保佐人や補助人の場合は、権限の範囲も登記されています。
前にも書きましたが、不動産登記や商業登記と違い、後見登記の記録は、一般には公開されていません。
債権譲渡登記と動産譲渡登記についても、登記ファイルに、譲渡の対象やら当事者やらが登記されています。

まあ、不動産登記と商業登記がどんなものかくらい知っていれば、それ以外の登記についえては「その他いろいろ」くらいの知識でも、大抵の人にとっては生きていくうえで特に何も損しないと思います(何か複雑な財産関係に巻き込まれた人を除く)。

では、今日はこの辺で。

登記の基礎知識シリーズ
登記とは何か
登記はどこでするのか
・登記簿には何が載っているか? ← いまここ
公示の原則
公信の原則
権利書の話
登記識別情報の話

0 件のコメント:

コメントを投稿