司法書士の岡川です。
「司法書士ってどんな仕事?」と聞かれると一言で答えるのが難しいですが、「登記と裁判手続の専門家」というのが、最も簡潔かつ正解に近い答えかもしれません。
司法書士の仕事については、おいおい紹介していきますが、その前に「登記」のお話です。
皆さん、「登記」ってご存知ですか?
民法を学んだことのある方は、ご存知かもしれません。
では、その「登記」ってどこでされているか知っていますか?
「登記」というのは、法律で定められた一定の情報を公簿に記載して、公示する制度をいいます。
法律で定められた登記すべき情報を「登記事項」といい、この登記事項が記載された公簿を「登記簿」といいます。
登記には、主なものとして不動産登記と商業登記があります。
本当は他にもいろんな登記(例えば、債権譲渡登記とか成年後見登記とか)があるのですが、現在の登記で大多数を占めているのがこの2つです。
不動産登記制度の存在する日本では、不動産(土地と建物)に関する一定の情報は、公示されているわけです。
公示というのは、読んで字のごとく、一般に情報を開示することです。
ということは、手数料さえ払えば、全国津々浦々の登記簿の中身を見ることができます。
少々悪趣味ですが、隣の家の登記記録を見て、(抵当権が設定されていれば)どこでローンを組んだかを知ることもできますし、住所さえわかれば、芸能人の家の権利関係を調べることだって可能です。
これは、登記というのが、税金の申告のように、行政機関のために提供するものではなく、取引関係に入ろうとする第三者が登記簿に記載された権利関係を調べるための制度だからです。
不動産登記であれば、「現在の所有者は誰か」とか、商業登記であれば「この会社の代表取締役は誰か」といったことです。
なので、これらは個人情報として行政が厳重に保護するのではなく、広く一般に開放されていなければ意味がないわけです。
ただし、成年後見登記は少々特殊です。
後見人等がついた場合、昔の禁治産者制度の下では、戸籍簿に記載されていたのですが、これはプライバシー上問題があるということで、今では後見が開始しても戸籍はいじられません。
その代わりに、後見登記ファイルに記録されることになります。
プライバシーに配慮して制度改正したわけですから、この成年後見登記簿は、原則非公開となっています。
したがって、不動産登記のように、簡単に「隣の人に後見開始してないかな」と、興味本位で調べることはできません。
成年後見登記でも登記事項証明書は発行されますが、これは主に後見人が後見事務を遂行するため(私が後見人ですよ、と証明するため)使うものです。
そういうわけで、第三者が後見登記の登記事項証明書を取得するのは、簡単ではありません(実は、後見人が正当に取得する場合であっても若干面倒なんですが、プライバシー保護のため仕方ないですね)。
なお、登記簿は、現在ではほぼコンピュータ化されていますので、登記簿を見たいと思っても、役所の中にあるモニターをのぞき込んで閲覧するわけにはいきません。
そこで、実際には「登記事項証明書」というものを発行してもらい、そこに記載された情報を見るわけです。
この登記事項証明書が、いわゆる「登記簿謄本」というやつですね。
余談ですが、「登記簿謄本」とは、登記簿がコンピュータ化される前、紙の「登記簿」というファイルがあった時代に、それをコピーしたもの(謄本)を指す用語ですが、わかり易いので今でも登記事項証明書のことを「謄本」ということが多いです。
次回は、その登記が実際どこで行われているかについて書きます。
では、今日はこの辺で。
登記の基礎知識シリーズ
・登記とは何か ← いまここ
・登記はどこでするのか
・登記簿には何が載っているか?
・公示の原則
・公信の原則
・権利書の話
・登記識別情報の話
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